定期的に思い出すレイキャビクの本屋さんでの思い出です。

レイキャビクの街中には大きな素敵な本屋さんがいくつもあって、夜遅くまで開いていてカフェがあったりもするのでお散歩中によく寄り道をします。
ロイガヴェーグル通りの一番賑わっているあたりにある本屋さんもよく行くところでした。
その時もひょいっと入って、手前のお土産や英語で書かれたアイスランド関連の本が置かれている観光客向けのフロアを通り抜け、階段を上がって雑誌や子供の本、文学などが置かれているエリアに行きました。
すると、ど根性ガエルのTシャツを着たメガネのアルバイトの少年がやって来て、「そこにはアイスランド語の本しかないよ」と言ってきました。
私は「わかりました、ありがとうございます」と流して、目当てのアイスランドの建築とデザインの雑誌 “HA” を手に取りました。その雑誌はアイスランド語と英語のバイリンガルで書かれています。

雑誌のデザインも紙質も内容もとても素敵です。
その雑誌を立ち読みしていたら、またど根性ガエルの少年がやって来て、「それの最新号に僕が書いた記事が載ってるよ」と言って、パラパラとページをめくり始めました。
この感じがアイスランドっぽいな、そういえばアイスランド人って人口の10%が一生に一冊は本を出すんだったっけ、と呆気にとられていると、彼はその記事を見せてくれました。
建築関係の記事だったので、「建築学生なの?」と聞くと、アイスランド大学で建築を学んでいるとのことでした。
「どこから来たの?」と聞かれて、「日本」と答えると、もう答えがわかっていたようで、「そうなんだね」というようなリアクションも無く、「この間日本に行ったんだ、いろんな建築を見たよ」と言われました。
私も彼がど根性ガエルのTシャツを着ていたので、もうそのことはわかっていました。私がTシャツを指して「そのカエルのTシャツだもんね」と言うと、彼は少し誇らしげになりました。
「君も建築を学んでるの?」と聞かれたので、「建築はすごく好きだけど、どういうわけかダンスをしてるよ」と答えると、また「そうなんだね」というようなリアクションもなく、流れるように「でもダンスも空間と形、とかそんな感じだよね」と言われました。
そんな発想が自然と出てきたことに本当にビックリして、何も言えなくなりそうだったのですが、かろうじて「そんな風に考えたことはなかったけど、確かにそうだね」と言って、その時までに出版されていたその雑誌4号分を全部買って帰りました。
この一連の会話のリズムと空気がとても印象的で、忘れないようにしたいです。
