Healing Circle

「ヒーリングサークル」は、6〜8人の医師や看護師、代替補完医療プラクティショナー、ヒーラーなどが1人の患者さんのお話を聴き、それぞれの立場から考えられる原因や解決策を提案する、統合医療的な試みです。

参加する医療従事者は、お互いの理論や手法を尊重し、サークルでは自分の専門領域に留まるようにします。

治療者と患者が出会うお見合いではないので、医療従事者は自分の手法がいかにその症状に効くか、という風には話しません。

聴く/聴かれること、洞察を得ることが目的です。

医療従事者は、患者さんの大まかなストーリーを聴いた上で、更に気になることを質問し、彼らの考えや、本当に一緒に治療に取り組むとしたらどんなことをするかを簡潔に紹介します。その場でアドバイスをすることもありますが、あるとしても少しです。

このような場を持つことで、患者さんは時間、お金、エネルギーを節約することができます。

6〜8人のプラクティショナーを調べ、アポイントメントをとって、毎回自分のことを話し、その都度料金を払うのは、元気な人でも大変なことです。

治療の場ではありませんが、聴かれること自体がとても治療的です。

Screen Shot 2018-09-18 at 15.06.36

大学院のアカデミックリトリート中に開催されたヒーリングサークルではライム病を抱えた患者さんがいらっしゃいました。

ライム病はマダニの感染病で、熱や関節の腫れ、皮膚の腫れ、頭痛、麻痺など多数の炎症があり、普通に生活を送ることが難しくなってしまいます。症状が多岐にわたるため、誤診も多いそうです。

彼女自身が健康についてとても深く学んでいることもあり、炎症はだいぶ落ち着いたそうです。

集まった医療従事者は、イマジェリー(瞑想の一種)専門家、統合医療を実践する医師、ヘルスコーチ、ナチュロパス、クランデラ (中南米の女性シャーマン)、心理療法家、アーユルヴェーダ医師の7名でした。

「全米から集めました!」というわけではなく、近所の人たちが集まってきたような感じで、さすが北カリフォルニアだなと思いました。

プラクティショナーをサークルに招待する際は、他の理論や手法を尊重すること、あくまで自分の専門領域に留まることを了承してもらいます。

毎回のサークルに1人のファシリテーターがつき、患者さんの重要な情報が漏れていないか、患者さんが快適かをチェックし、場を保ちます。今回はヘルスコーチの方がその役割を担いました。

まずは患者さんの病の経過を語ってもらい、現状の説明まで終わった後にプラクティショナーからの質問を受けます。

クランデラの方は、初めに症状が出た時、日常生活でどんなことが起きていたか、を聞き、

心理療法家の人は、子供時代も含む過去のトラウマについて聞き、

イマジェリー専門家は身体が彼女に何を求めているかを問うように勧め、

アーユルヴェーダドクターは簡単な脈診をして状態をチェックし、

統合医療家は質問というよりは彼女の話に寄り添って振り返るようなレスポンスをしました。

プラクティショナーがお互いをサポートするかのように素晴らしいリズムで質疑応答が進んだことで、繰り返し出てくるテーマとして、”トラウマ”、”信頼” が浮き彫りになりました。

ナチュロパスの先生は、普通はハーブを処方するかもしれないけど、あなたの場合はまず障壁を取り除いて、サポートを探して、信頼することが必要、とおおらかにまとめてくださいました。

私にとってのハイライトは、心理療法家の方の質問でした。

「素晴らしいハーバリストの人の本に書いてあったのだけど…

ライム病って、どこか場所の名前が由来になっているんでしたっけ?

(患者さん:「そうです、オールドライムという場所で最初に見つかったんです」)

そうですよね、それでね、その場所でライム病が見つかる前から自生し始めたハーブが、ライム病を治すんですって!

(聞いている生徒たち:すごーいという反応)

あと、感染経路は、確か鹿のダニでしたよね?

(患者さん:「実際はネズミだそうです。その鹿が住んでいるエリアにいるネズミが人間に運ぶんです。」)

Fantastic!! 鹿とネズミは似ているからね。

(みんな一瞬動揺、なぜfantastic?どこが似てるの?)

鹿もネズミも、何かあると、こんな風に(ビクッと怯えるジェスチャー、ダンサーなので迫力がありました)なるでしょ。

あなたも、何か(ビクッとするジェスチャー)ってなるときはない?」

鹿やネズミのように、常に警戒して怯えているようなところはないか、ということです。

ライム病に感染したことのメタファーを考えさせられるような問い。

ストレスを受けていないか、サポートがあるか、信頼しているか、という問いでもあります。

このあと、患者さんは少し黙っていましたが、心の中で思い当たる風景がたくさん湧き上がっている様子が外から見て取れました。

その後すぐ、涙を流しつつも、強く保ってその思い当たることを説明してくださいました。

ガラガラと何かが崩れ落ちていくようでした。

終わりには一人一人のプラクティショナーから一言いただき、

患者さんの感想も聞きました。

患者さんは、最初は期待せずあまり何も考えずに引き受けたけど、やっぱり自分に必要なことだったみたい、もうすでに身体がすごく軽い、と、大泣きした後のスッキリしたような顔でおっしゃっていました。

患者さんを見送った後、簡単な振り返りと学生からの質問タイムがありました。

一番盛り上がった質問は、

「エモーショナルなとき、プラクティショナーはどう対処するか?」

でした。聴いている生徒は泣いていたり、いまにも誰か駆け出して彼女にハグするのではという気配すらありましたが、プラクティショナーの方達はニュートラルに保っているように見えました。

でも実際は、エモーショナルになっていたし、ハグしたかったそうです。

普段の臨床でもよくあることなので、それぞれの方がそれぞれの対処法をお持ちでした。

興味深かったのが、患者さんと自分の間に川が流れているようなイメージを持つという方法。あくまで他者であるというイメージであると共に、患者さんから湧き出た感情も、自分から湧き出た感情も、同じ川に流れて行って海に帰るようなイメージでもあります。

もっとシンプルな方法は、帰ってから泣くこと。

私も終わった後に外で大泣きしようと考えていました。

ですが、終わった後は自然と部屋の外で生徒たちが小さなグループになって議論が続いて、そこで消化できました。

おもむろにギターを弾きはじめる友達。話しながらチラチラ星をみて上の空になる私。

Healing Circleの論文も載せておきます。

Jordan, M. (2014). Healing Circles. Global Advances in Health and Medicine, 3(4), 9-13.

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s